『リレーで走る父』

子どものころ、学校とは別に、地域にある自治会でも運動会が開かれていました。

近所のおばさんがキレキレのダンスをひろうしたり、

いつも物静かな自治会長さんがパン食い競争に出たりするので、

とてもおもしろいのです。  

ただ、一番の見どころの地区対抗リレーの時だけは、

生きた心地がしませんでした。

父が出場すると、コーナーでよく転んでしまったからです。

 「わあ〜」というどよめきの中で立ち上がり、

ひじやひざから血を流しながら次の選手に何とかバトンタッチ

。私の妹は泣きながら父の腕を引っぱり、

救護テントに連れて行くのがお決まりでした。

私はいつも陰からその様子を見ていました。

(創作はり絵作家 渡辺順子、絵・題字も)