『豆まき大会』

 私が通っていた小学校では毎年、節分のころに朝の全校集会で豆まき大会がありました。

先生たちが鬼(おに)になります。  

「鬼は外!」「福は内!」というかけ声で、

児童はそれぞれの担任の先生に向かって、全力で豆をまくのです。

「先生は大人だから、当たってもあまり痛(いた)くないだろうな」

と思っていました。  

6年生での大会前日のことです。

先生は給食の時間に

「本当のことを言うと、豆が顔に当たるとすごく痛いんです。

去年はメガネがこわれてしまいました」

と、なみだ声で言いました。

 小学校での最後の豆まき。

私のクラスだけは、やさしい投げ方に変わりました。

(創作はり絵作家 渡辺順子、絵・題字も)