創作貼り絵作家渡辺順子のホームページ☆ハリエノアトリエ☆ある犬のおはなし

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『この声は、あなたに届きますか』





原作・画 kaisei

貼り絵 渡辺順子








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『かわいいね、この子にする』








そう言ってあなたはぼくを


抱きしめてくれました













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そうして ぼくは 



あなたの家族になりました


















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何も


知らないぼくに



あなたはうれしいことや



楽しいことを


いっぱいおしえてくれました



お散歩も


かけっこもボール遊びも

































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春には


たんぽぽのたくさん咲くこの道を


あなたと一緒に歩きました






夏には


雨上がりの水たまりをピチャピチャと


あなたと一緒に歩きました




























秋には







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秋には

たくさんの枯れ葉の上を


ガサガサと音をたてて


あなたと一緒に歩きました










冬には


真っ白な雪の中を

サクサクと一緒に歩きました











































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ぼくは


あなたのことが


大好きです




あなたと過ごした


すべての時間が


ぼくのたからものです





















































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でも


いつからかな






あなたはいつも忙しそうで






ぼくとの時間は


だんだんへっていきました






































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ぼくは





少し




寂しくて

























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でも

あなたのじゃまは

したくないから


ぼくは待っていました



ぼくはあなたのことが

大好きだから・・・



あなたもきっと

ぼくのこと 大好きだよね?


だから

少しくらい寂しくても

平気です




























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『おいで』












あなたの声です




ぼくはうれしくて

思わず かけあしで


あなたのもとへ


走りました



































































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ぼくは


あなたのとなりを歩きました


ふたりで歩く道


ぼくは全部おぼえているよ


あたながおしえてれた


たんぽぽの道


いっしょにあそんだ公園














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ひとまわりして戻ってきたけど


今日はお家に入りません




なんだか


とくべつな日です




窓から見える

みなれない景色














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ここは来たことのないところ









あなたは知らないおじさんに

ぼくのリードを渡しました

おるすばんかな・・・


でも

あなたはいつもと少しちがいました


何も言わずにぼくの顔を見て

少し悲しそうな顔をしていました


大丈夫だよ


ぼくはいい子にまってるから












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冷たいへや



悲しいにおいがしました


おじさんは


ぼくに優しくしてくれました




ぼくの頭をなでて



『よしよし、いい子だな』って


何度も言ってくれました












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でも夜になると


おじさんはいなくなってしまって・・・


ぼくは冷たい床にひとりで寝ました


悲しい声がいっぱい聞こえてきて

ぼくは少し 寂しくなりました


でもすぐに

あなたがむかえに来てくれるから






だから大丈夫










































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ぼくは毎日


ここにすわって待ちました



あなたが来たら


一番に見つけられるように


入り口がよく見える


この場所にすわって


まちました














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おじさんは


いつもぼくに話しかけてくれました


とっても優しい顔をして


いつもぼくの頭をなでて


かならず


『いい子だな、いい子だな』って



言ってくれました



だから・・・














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ぼくは寂しくありません































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何回か夜が来て・・・


何回か朝が来て・・・


おじさんはぼくを呼びました


いつものように

『よしよし、いい子だな』って


ぼくの頭をなでて・・・




そして

今日はぼくのことを

ぎゅっと

抱きしめてくれました







































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おじさんはぼくを連れて



べつの部屋へ行きました




そこにはおともだちが




たくさんいました




















































































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『そこに入りなさい』


おじさんは言いました






























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ぼくが中に入ると

扉はしめられてしまいました

冷たい金属の部屋の


異様な雰囲気に


みんなの小刻みに震える振動や

どくどくと速くく打つ鼓動が

伝わってきて


ぼくは急にこわくなりました


扉をあけようとしても

あけることができなくて・・・



それでもぼくは

必死で扉をカリカリしました




















































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しばらくすると

なんだか苦しくなってきました

ぼくたちは部屋の奥に

小さな窓を見つけ

そこから外をのぞきました





まどの向こうにおじさんが見えました

ぼくは『あけてー』

ってさけびました

みんなもさけびました

でもおじさんには聞こえないみたいで

だからぼくはもっともっと

大きな声でさけびました



何度も何度も

でもおじさんは下を向いたままうごきません



















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ぼくたちは


立っていることができなくて






次々にたおれていきました


だんだん薄れていく意識の中で


おじさんの声が聞こえました







『ごめんよ、

たすけてあげられなくて

・・・ごめんよ』














































































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そしてぼくは歩いていました


あなたと一緒に歩いた道


あなたがおしえてくれた たんぽぽの道







この先を曲がれば


またあなたに会える

きっとあなたもぼくに会えるのを

まっているはず







そう思うとなんだかうれしくなって


ぼくは走りだしました


















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『ただいま』






























●最後に・・・

この子たちは『モノ』ではありません。

この子たちには『喜び』も『悲しみも』あります。

しかし、日本では毎年12万匹以上の犬や猫の命が

こうして消えていっています。

この子たちがガス室で、そんな気持ちで最期を迎えるのか

どうかみなさんで考えてみてください。


そしてどうしてこんな悲しいことがなくならないのか

どうしたら無くすことができるのか、少しでもいいので

調べたり、誰かと話したりしてもらえませんか?

この子たちの消えてしまった命は

もう戻ってくることはありません。

でも、これ以上小さな命を奪わないために

私たちにできることはたんさんあるのではないでしょうか。







『殺処分』

どんな言葉を選んだとしてもこのことを

矛盾なしで語ることは本当に難しいと思います。

しかし、不自然な命の扱い方だと感じている人は

きっとたくさんいると思います。

このおはなしを通して、

『命』について今よりももう少しだけ

考える時間を作ってもらえたらと思っています。

たくさんの方に読んでもらいたいと思っています。

読み終わったら本棚にしまってしまうのではなく

ぜひ『読んでほしいな』と思う誰かに

届けてもらえたらうれしいです。


絵本『ある犬のおはなし』原作者kaisei様のあとがきより


















作者サイトへのリンクはこちら





絵本『ある犬のおはなし』
作・絵 kaisei
 発行所 株式会社 トゥーヴァージンズ
ISBN 978-4-908406-00-3

(定価)本体価格 1,000円(税別) 絵本『ある犬のおはなし』


全国書店・amazonでも↑ご購入可能です。


●知ったら、広めてほしい




のら猫12匹以上、捨て犬1匹

私は幼い事からずっと拾ってきた犬や猫に囲まれて育ちました。

ペットショップ???そんな時代だったのです。

大人になってはじめてお金を出して犬を買いました。

『今の時代、動物はペットショップで買うもの』

そう思うようになっていたのです。

でも、ここ数年インターネットを通じて、

『人に捨てられ殺される命』、お金儲けのために『産まされる命』

について知りました。想像を絶する残酷さです。

動物を『捨てる人』『買う人』がいるから終わらない。

そして私もその一人だったことに気が付きました。

だからと言って今の愛犬に出会わなければよかったなんて思えません。

今ここにいる命は最後まで責任を持って幸せな最期を

迎えさせる事は当然の義務です。愛犬にどれだけ癒され、

優しい気持ちにさせてくれた事かはかりしれません。

動物への感謝の気持ちと同時に、ひとりでも多くの人に

共感していただけたら知り合いに作品を紹介したり、

学校の授業などで使用してほしいのです。




●貼り絵作品の公開について

最近では広島県で殺処分がゼロになったそうです。

募金を含め、同じ気持ちを持っている沢山の協力者によって

達成された快挙だと思います。

私の住む東京はまだまだ殺処分があります。

微力でも自分にできる事を何かしたいと考えはじめた頃、

FaceBookで『ある犬のおはなし』(動画)に出会いました。

飼い主を信じ続ける犬の心をこんなに丁寧に描かれた作品に

心を打たれ涙が止まりませんでした。

そして常に心にある作品となりました。

もっと早く知っていれば、そう思わずにいられません。

自分にできる事は人に伝える事、知ってもらう事。

まわりにいる家族や友人、生徒さんたちに伝えることならできます。

まずは原作原画をお借りして作品を貼り絵で『紙芝居』にして

貼り絵教室で子供たちが制作、発表することを思い立ちました。

さっそく絵本を購入し、お手本が完成しました。

そして作者のkaisei様に直接連絡をさせていただき、

出版社の承諾をいただいた上で作品の公開の許可を

もらうことができました。出版されている絵本にも関わらず、

原文、原画をそのまま使わせていただき

kaisei様、出版元のtwovirgins様には

感謝の気持ちでいっぱいです。

『ある犬のおはなし』が日本中に広がり、

沢山の人が協力して動物殺処分廃止(ゼロ)になるよう

心から願います。





創作貼り絵作家 渡辺順子